「ひー。お前…?」
朱貴が抑揚の無い声で言う。
「手を組んではいまへん。まあ…デブアンドテイクですわ。今の処」
アホハットの目が――
鋭く光る。
それは殺気にも似ていて。
やっぱりこいつ…只者じゃねえ。
俺はその意識を強くした。
「"ワンワン"はん、そんな怖い顔せぇへんでや~?
いやいや、お忙しい中、すんまへんでしたな~。
一応"あいつら"は無限に溢れてくる"設定"なんでしたわ」
軽~く言った。
「無限?」
「そや。"ワンワン"はんが斬っても斬っても、斬った分新たな奴が生まれ…結局は元通り。あれはそういう術だったんですわ…種明かしすると」
「あ!!?」
「"ワンワン"はん達の共通する"記憶"だけを繋ぎ合わし、それを現実のように無限ループさせていただけですわ~。いや~、よく迷い無くばっさばっさと斬ってられましたな~。さすがは紅皇のお弟子さんや~」
拍手までくれた。
だけど鼻高々になる俺じゃねえ。
こいつ軽く言ってやがるけれど、
こいつ満面の笑顔だけれど、
つまりの処――
あれらは皆偽物だったって言ってるんだろ!!?
だから倒しても倒してもうじゃうじゃだったのかよ。
蛆みたいに。
"共通の記憶"
それが何処までを言っているのか判らないけれど。
現実に存在しないというのなら。
ただの術の一環にしか過ぎないというのなら。
「見えない存在が偃月刀に映ってたのは?」
偃月刀が真実を映すというのなら…。
「その記憶が"真実"であれば映りますな」
見えない敵ということだけではなく、
映るという記憶を真似されたわけ?
何だよ、それ。
そんなのアリかよ!!?

