な、何だ…この明らかに怪しい奴。
黒シルクハットって何だよ?
手品師か?
いや、そんなのはまだいい。
問題は着ている服だ。
何で黄色い絣(かすり)模様の――
半纏(はんてん)だ!!!?
「ふぅ…今夜は冷え込みますな~」
半纏の袖からちょこんと出した指先を口元に当て、背を丸めて擦り合わせている。
怪しいだろ。
絶対怪しすぎるだろ!!?
こんなのが、新たな敵か?
こんなのに、追い詰められていたわけ!!?
その格好故に怒り半分。
未知数故に警戒半分。
偃月刀を握り直し、身構えた俺に…
「何だよ、朱貴と聖…
知り合いだったのかよ…」
小猿が驚いた声を出した。
ヒジリ…。
「ひ、聖!!!?」
それはこれから俺達が会いに行こうとしていた情報屋で。
確か一流の情報屋で…。
それが怪しいハット半纏野郎だ!!?
俺は慌てて桜を見た。
「半纏を脱げば普通の服だ」
いや、問題はそこじゃねえ!!!
「葉山は~ん、お久しゅう~」
ひらひらひら~。
手を振られた桜はたじろがない。
やっぱ本人なのかよ!!?
「来てくれへんから、
来てしもうたやんか~。
会えたようで何より~」
軽い。
何て軽い男なんだ。
シルクハットからはみ出ている金髪からして。
もうこれはチャラ男だ。
まあそこそこ顔は整っているだろうけれど、櫂や玲…此処に居る朱貴に比べれば屁のカッパ。
並の上ぐらい?
俺が言うのも何だけどさ。
そんな時、怪しい半纏野郎と目が合った。
「おお~!!!
お噂の、"ワンワンはん"やな~。
聖と申します、よろしゅう~」
「俺は"ワンワン"「宣言、おおきに~」
変な処で言葉被せるな、アホ!!!
「だから俺は"ワンワン"「再確認、おおきに~」
く~ッッッ!!!

