シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

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仄かな光を放つ上弦の月。


ぼんやりとした黄金色に染まって、桜の小さな身体がくるくると踊るように動き回る。


桜は――

得意分野の"大量の敵"一掃時、

やけに活き活き動くように思う。


小柄故に筋力がないと固執している分、筋に回す力を得意の"敏捷性"に向けられるから、迷いが一切なくなったかのように…動きにより"キレ"が出る。


筋力がないって言っても、それは俺と比較しての話。


常人に比べれば、かなりのものだ。


桜の身体は、華奢そうに見えて結構骨格はしっかりしてるし、緋狭姉との鍛錬で筋肉もみるみるついた。


成長期にあるせいか、時間経過と共に…オトコらしくなってるのが判る。


俺は昔から、無駄に筋肉ばかりがついているけど、精緻に欠けるというか…。


…俺と桜は対照的なんだ。


お互いの弱点をお互いで補佐しているような…。


きっとプライド高い桜は認めないだろうけれど。


「まだいるな…」


背中合わせ状態で、俺達は偃月刀に映る敵の姿を見た。


"うじゃうじゃ"だ。


目で見る限りにおいては、誰もいねえ。


……2人を除いて。


――俺達に任せろ!!!


勝手に俺と桜が飛び出したから、やることなくした小猿と朱貴。



短期決戦楽勝かと思っていたんだけれど…


「"果て"はあるのかよ…」


別に体力が心配なんじゃねえ。


あの"パワーアップアイテム"で体力気力は漲っている。


ただ――

時間がかかるのが口惜しい。


速攻で桜と連破している筈なんだけど、大量に掃いても大量に押し寄せ…結果プラマイゼロの気がしたんだ。


一体何人で来てるんだ?


此処で敵を抑えてはい終わり、なら話は簡単。


だけど俺と桜は、最終的には"約束の地(カナン)"に行かねばならねえ。


ボケボケとしている暇は全くねえんだ。


ここで敵を倒せばはい終わり、じゃねえんだ。


俺達は…最終的に櫂の元に駆け付けねばならない。