「こんな階段…オレは知らない。
何だ、この道は…。
どうして、久涅は知ってたんだ?」
訝る久遠の声が反響する。
慎重に俺達は階段を下りていった。
壁には、黄色照明がちかちかと点灯している。
この場所にも…電気は通っているのか。
埃に塗れた階段が、使われなくなって年数が経つことを物語るけれど、足場を見てみれば…真新しい多くの靴跡で踏み荒らされたような形跡があった。
「また階段の出現だ…。どうやら連中は、この先を進まず…一度上に上がったようだな」
靴跡を追いながら、俺達は階段を上っていく。
何処に出るというのか。
その時――
上から声がしたんだ。
「皆様、とにかく"約束の地(カナン)"は素晴らしい。
最高です!!! 感動です!!!
見えてますか、聞こえてますか!!?
ああ!!!
こんな"純白"の奇跡の中から――
もう少しで"彼ら"が出てきます!!!」
"彼ら"?
それはマイクで叫んでいるらしい若林アナの声。
久遠は、耳を手で押さえた。
「あの女…興奮すると益々声音を上げる。
一段と耳障りになって、脳が掻き乱されそうだ」
俺はそこまでの害毒性を感じてはいないが、久遠にとっては切実なものであるらしい。
「ああ、何て幻想的な世界!!!
甘美です、甘美です!!!」
地上では――
一体何が起っている?

