シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



俺は引き攣った顔で溜息をつきながら、着ていた蓮のコートを脱いで、クラウン王子に引っ掛けようとした。


俺も寒いけれど…

此処までカタカタ震えた奴らを見殺しに出来る程、俺は人でなしではない。


人並の"人情"はあるつもりだ。


それなのに…。


「おい死に損ない!!!

風邪で死んだら洒落にならないぞ?


こいつらはお前と違って頑丈なんだ。

捨て置け」


苛立たしげな紅紫色の瞳。


"捨て置け"


何様だ、久遠。


そう睨み付ければ。


「……ちっ。


おい、お前達――」


珍しく久遠が折れたと思いきや…



「寒ければ自分で発熱しろ。


総帥命令だ」



『『了解(ラジャー)』』



久遠…。

何故其処まで、毛皮を貸すのを拒む?



「これでいいな。

とにかくお前は脱ぐな。

脱いだら、露出狂だって叫ぶぞ」


ゲテモノ女装の上に露出狂。


おかしな異名はもう沢山。


クラウン王子は、飛び跳ねたりスクワットを始め、"自家発熱"中。


上と下が別々だから仕方が無いとしても、上下別々の動き方がまた…異様さを増長する。


同じ方向に動けばいいのに、同じコトはしたくないらしい。


人間では絶対ありえない動き方だ。



『おお、ほかほかだな~』


『あちちだね、きゃはははは~』


何だか…

コート1枚で騒ぐのが馬鹿らしくなってきた。


俺は脱いだコートを再び着た。


それに対して久遠は特に感じ入る処はないらしく、


「やはり以前からの記憶通り――

続き間など、何処にもないな」


気怠そうに、辺りを見渡していた。


出入り口たる扉は1つ。

その前には俺達がずっと居たんだ。


俺達がそれを見ていないということは、事実上此処は"密室"で、集団が突如消えてしまったことになる。


瞬間移動で消えたのでないならば、一体…。



その時俺は――


――!!!


久遠の毛皮が、不自然に揺れているのに気づいた。


下から上に。

まるで重力に逆らうように。


風の流れが生じていたんだ。


どうして下から?


それは…

骨の山のあたりからだった。