俺は引き攣った顔で溜息をつきながら、着ていた蓮のコートを脱いで、クラウン王子に引っ掛けようとした。
俺も寒いけれど…
此処までカタカタ震えた奴らを見殺しに出来る程、俺は人でなしではない。
人並の"人情"はあるつもりだ。
それなのに…。
「おい死に損ない!!!
風邪で死んだら洒落にならないぞ?
こいつらはお前と違って頑丈なんだ。
捨て置け」
苛立たしげな紅紫色の瞳。
"捨て置け"
何様だ、久遠。
そう睨み付ければ。
「……ちっ。
おい、お前達――」
珍しく久遠が折れたと思いきや…
「寒ければ自分で発熱しろ。
総帥命令だ」
『『了解(ラジャー)』』
久遠…。
何故其処まで、毛皮を貸すのを拒む?
「これでいいな。
とにかくお前は脱ぐな。
脱いだら、露出狂だって叫ぶぞ」
ゲテモノ女装の上に露出狂。
おかしな異名はもう沢山。
クラウン王子は、飛び跳ねたりスクワットを始め、"自家発熱"中。
上と下が別々だから仕方が無いとしても、上下別々の動き方がまた…異様さを増長する。
同じ方向に動けばいいのに、同じコトはしたくないらしい。
人間では絶対ありえない動き方だ。
『おお、ほかほかだな~』
『あちちだね、きゃはははは~』
何だか…
コート1枚で騒ぐのが馬鹿らしくなってきた。
俺は脱いだコートを再び着た。
それに対して久遠は特に感じ入る処はないらしく、
「やはり以前からの記憶通り――
続き間など、何処にもないな」
気怠そうに、辺りを見渡していた。
出入り口たる扉は1つ。
その前には俺達がずっと居たんだ。
俺達がそれを見ていないということは、事実上此処は"密室"で、集団が突如消えてしまったことになる。
瞬間移動で消えたのでないならば、一体…。
その時俺は――
――!!!
久遠の毛皮が、不自然に揺れているのに気づいた。
下から上に。
まるで重力に逆らうように。
風の流れが生じていたんだ。
どうして下から?
それは…
骨の山のあたりからだった。

