久遠が固い顔をして、扉の奥の空間に足を踏み込んだ。
ふさふさとマーブル模様の毛を揺らして入ってくる。
朽ちて頽廃した空間に、輝くような高級草食動物。
外見上はまるでミスマッチなのだが、頽廃的で虚無的な表情を見せる久遠には、妙に馴染んでいるように思えるのが不思議だった。
不協和音で成立できる合奏(アンサンブル)。
空間の広さは、8畳間強。
うち、4分の1スペースの地面には、やや黒ずんだ白骨が散乱し、山に積まれた状態だった。
山の頂には、頬が欠けた髑髏。
この大きさは…子供だろうか。
狂気の残滓を受け取らぬようにしながら、慎重に辺りを幾ら見渡せど…扉以外の出入り口は何もなく。
人間達の熱気と、回されるカメラの電熱量がなくなった分、瘴気が底冷えしそうな冷たさを伝えてきた。
溜息交じりに後を振り返ると、
――!!!?
俺は思わず仰け反った。
クラウン王子は一回り小さくなっていたからだ。
『ホントだ。くっついてればほかほか~』
『だろう? それでなくても"これ"は冷たいのに、更に周りが冷たくなっちゃえば…氷抱いているようなものだものな。もっと首元にくっつけよ。お前体温高くてぽっかぽかなんだから。でも寒~』
更にクラウン王子は小さくなった。
恐るべし。
クラウン王子は変形も可能。
久遠は…
寒がっている2人に、毛皮を着せてやることは考えてもいないらしい。
1人…少し汗ばんだ髪先を見れば、久遠は暑いだろうことは間違いなく。
「何」
顎で、カタカタ震えるクラウン王子を促せば…
「こんなに寒いのに、脱げだって?
お前…女装以外に、鬼畜の上、"そんな"趣味までもあるのか?」

