『久遠さま~。皆は何でないてるの?』
『幻術でもかけたんだよ、あの男』
クラウン王子がカクカクしながら、忍んだ声を出した。
幻術?
いつ、どのタイミングで?
俺が感じ取れないのは――
久涅が無効化の力があるからなのか?
「"模倣"、か…」
久遠は薄く嗤う。
「人体には神気というものが流れ、それは音楽のように個々独特の旋律(リズム)を持っている。波長…のようなものだ。
オレは、言葉という声調によって、その個人の波長と周囲の波長とを合わせて"言霊"の力を発動させるが…久涅はその逆をやったのだろう。
久涅は…人体の旋律をずらしてぶれさせた」
模倣とは…久遠の"言霊"の力か?
言霊…。
久涅の言葉に、そんな力があったのか?
何故…久涅はそんなことも出来る?
長い指が俺を指す。
「ぶれれば心身に"乖離感"が出る。ある種…眠りに陥る寸前の状態。
体を実感しているのに、頭は夢を見ている…2つの世界の狭間で揺れているそんな状態を生み出す」
乖離感は俺も感じた。
「このような心身がさざめく不安定な状態においては、自らの"意思"が…幻覚という自ら作り出した夢に直接反映される」
『願い求めよ』
その単語を使ったのは久涅。
そして皆…天使を見たいと言い出した。
――天使様!!!
あの扉の奥で――
天使を見たいという願望が、
夢のような幻に輪郭を与えたというのなら。
天使だと"信じる"限りにおいて、
それは真実――。
涙して歓喜しているものが何であれ、
それは何処までも奇跡。
まるで"約束の地(カナン)"に居た…
"狂信者"達のように。

