久遠の表情は、どこまでも虚無。
悲哀も憤怒も超越した"無"の表情からは、一切の感情を推し量ることが出来ない。
「此処は――主に爺…レグの実験で使い尽くされた"彼ら"のゴミ捨て場の1つ。なまじこんな扉に守られていた為に、緋狭の火の手から逃れ、今も骨の形を残していたまま。
荼毘に付されず残っていたのは、消えてなくなりたくないと…"存在"を主張する彼らの"遺志"故のことかと…あえてそのまま残そうと、周囲だけをひっそりと浄化し続けるつもりだった。
"身内"の不幸は、公開すべき類ではない。
更に撮影など…愚かしい」
淡々とした口調。
「天使と聞けば、人は勝手に恐れ…
同時に奇跡を求めて群がってくる。
無いものねだりの"妄執"を押し付ける。
昔も今も――」
瑠璃色の瞳には、ちらちらと…
紅紫色までには至らぬ炎が見える。
「お前達が見たのは…
永遠をもたらす血肉を失った――
ただの…ガラクタだけだ。
それを歓喜できる人間は、
何て――…」
その声音は悲哀じみていて。
そんな久遠を平然と見ていられなくて、俺は…久遠から顔を背けた。
"お前だって人間だろう?"
喋れない俺からは、言葉が出てこない。
脳裏に…思い返されるのは、
あの扉の奥で、唯一"生彩"を見せていたオブジェ。
まだ瑞々しい…供花があったんだ。
それは…
久遠が手向けていたのだろうか。

