「"悦楽"は、やがて"破滅"に繋がる」
そう抑揚ない声で却下したのは久遠。
しかし久涅はそれを笑っただけで。
「破滅の歌声を…
記録したいとは思わないか?」
ざわめいた。
「破滅が待ち受けるまでの至上の悦楽。
見てみたいとは思わないか?
聞いてみたいと思わないか?」
それは悪魔の誘惑のように。
ゆっくりとじわじわと。
妖しい"天使像"を創り出す。
そこには清廉さは何も無く。
崇高なものも何一つ感じないなれど。
俗世慣れしている人間達を誘き寄せるには、十分過ぎる魅力的な言葉だったらしい。
少なくとも…猜疑心を薄れさせるくらいには。
俺の警鐘が…警戒の音をたてている。
「見れるのなら…見てみたい」
「見るくらいなら」
「歌声って…どんなのだろう」
そのざわめきは、熱さを増して。
「俺は、聞けるなら聞いてみたい。
天上の調べを…」
1人が強い口調で言えば、違う1人が呼応する。
「俺も…確かめるぞ。
カメラが証拠だ」
"同調"で繋がる、連鎖反応。
「天使というものを見てみたい」
その声に1つに纏ってきた時、
「では――
願い求めよ」
久涅は嗤った。
哀れんだような眼差しで。
「天使の歌声が聞こえるように――
強く強く願い求めよ」
それはどこかで聞いたような台詞。
記憶が…ゆらゆらと揺れる。
くらくらと、眩暈がして――
俺の警鐘の音が消え去った。

