「久涅、もう一度言う。
お前は"開ける"ことは出来ない。
――引き返せ」
久遠が言う"開ける"とは、先程簡単に開かれた扉のことではない――ということを、目の前に拡がる"黒い壁"で悟る。
「紫堂さん、何ですか、
この黒い岩…」
黒壁――否。
黒い岩の扉があったんだ。
以前"約束の地(カナン)"にて、何度も目にした…この扉。
黒い扉に刻まれている模様が、"それ"だと伝える。
あれは…
闇使いでなければ開けられない扉。
闇使いが岩扉の刻印に対応する手印を施して、初めて開閉可能になる。
各務家は全員が闇の力を使えた。
その他に"闇"に染まる特殊な存在…
旭は確認済みだが、多分司狼も可能なんだろう。
――お前では、"開ける"ことは出来ないぞ?
――それだけは"無効化"できない。
久涅が無効化という力の持ち主だということは、久遠の知る処らしい。
それは既知の仲だからというより…
機械室のドアを開いた時から
ある程度推測していたのかもしれない。
そしてエレベータ、分厚い扉の認証まで、難なくこなしたのを見れば。
防護という"セキュリティ"は丸裸にされているわけで。
その中で久遠が黙ってついてきたのは――そんな久涅でも、この先には絶対行き着かない自信があってのことだろう。
「天使――
というものを見たことがあるか?」
久涅は突然そう言い出した。
「天使の飼育場所が、
KANANにはある」
空気の色が変わった。
それは久遠と…
クラウン王子からのものだ。
「今から――
天使の歌声を…
聞かせてやろう」
そう言ったんだ。

