シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「久涅、もう一度言う。

お前は"開ける"ことは出来ない。

――引き返せ」


久遠が言う"開ける"とは、先程簡単に開かれた扉のことではない――ということを、目の前に拡がる"黒い壁"で悟る。


「紫堂さん、何ですか、

この黒い岩…」


黒壁――否。


黒い岩の扉があったんだ。



以前"約束の地(カナン)"にて、何度も目にした…この扉。


黒い扉に刻まれている模様が、"それ"だと伝える。


あれは…

闇使いでなければ開けられない扉。


闇使いが岩扉の刻印に対応する手印を施して、初めて開閉可能になる。


各務家は全員が闇の力を使えた。


その他に"闇"に染まる特殊な存在…

旭は確認済みだが、多分司狼も可能なんだろう。


――お前では、"開ける"ことは出来ないぞ?


――それだけは"無効化"できない。


久涅が無効化という力の持ち主だということは、久遠の知る処らしい。


それは既知の仲だからというより…

機械室のドアを開いた時から

ある程度推測していたのかもしれない。


そしてエレベータ、分厚い扉の認証まで、難なくこなしたのを見れば。


防護という"セキュリティ"は丸裸にされているわけで。


その中で久遠が黙ってついてきたのは――そんな久涅でも、この先には絶対行き着かない自信があってのことだろう。



「天使――

というものを見たことがあるか?」



久涅は突然そう言い出した。



「天使の飼育場所が、

KANANにはある」



空気の色が変わった。


それは久遠と…

クラウン王子からのものだ。



「今から――

天使の歌声を…

聞かせてやろう」



そう言ったんだ。