諸悪の根源は破壊されたとはいえ、そこから長年派生され続けた瘴気の要素はまだ土地そのものにこびりついて、簡単に消えるものではなく。
今は、黒い塔があった場所はホテルが建っている。
久涅がホテルに入った途端、
ピキンと何かが弾け飛んだ音がした。
まるで弦が切れたかのような。
同時に――
久遠がその肩を掴んで立ち止まり、
振り返る久涅を睨み付けた。
「どういうことだ?」
「これが体質なんでね」
交わされたのはそれだけの会話。
だけど判った。
体質=無効化。
そして――
『警戒しろよ、旭。久遠様の浄化の布陣が…崩れた』
『うん。乱れてるね…』
久遠が浄化の布陣を敷いていたというのが驚きだ。
まさかふらふらと遊園地を歩いていたのは…いや、あまり買いかぶらないでおこう。
何にしても、久遠によって浄化されていた此の地に踏み込んだのは、"無効化"出来る久涅。
弾けた音は、久遠の術が無効化された音なのだろうか。
ああ…。
瘴気が濃くなっていく。
判らぬのは報道陣。
久涅は――
「此処から…撮影を許可する」
そう言って、エレベータに全員を乗せた。
煌びやかな大理石で作られた大型エレベータ。
全員乗ってもまだ余裕がある。
久涅は階数のボタンではなく――
そのボタン群の上にある…ホテルのロゴがついたパネルに手を翳した。
『認証しました』
どこからか聞こえてきた機械の声。
認証?
エレベータは、ボタンを押してもいないのに降下して行く。
何だ?
このエレベーターは何なんだ?
地下1階。
地下2階。
最下の地下3階は駐車場の筈で…。
――!!?
数字表示がないにもかかわらず、
エレベータは止らず…更に深層へと進んだんだ。

