久涅先頭に暫し歩く。
空にはまだヘリの音が煩い。
煩いのは…若林アナの声もそうだ。
久涅に気に入られようと、ひっきりなしに喋っている。
この女の声は、マイクを通せば更に甲高く変わるんだ。
こうした媚びた声が好きだという男もいるから、人気アナなんだろうが…少なくとも俺は受け付けられない。
聞けば聞く程、頭痛がしてくるようで。
意識が朦朧としてくる心地にさえなってくる。
「特にこの笑い声…。
まるで硝子を爪で引っ掻いたようだ」
俺より更に顕著なのは久遠のようで。
今ではもう、両耳を両手で押さえて顔を歪ませている。
さすがの言霊使いも、内部から攻撃してくるような"音"は弾けないらしい。
そこまでの苦痛な声音だというのは判るのだが、その久遠の姿は放映されているはずだ。
紹介する遊園地のオーナーが耳塞いでいる図。
そこにやる気など感じられない。
ショッピング街の外れまで歩く。
久涅の足は止ることない。
"約束の地(カナン)"の電飾が疎らになっていく。
何処まで行くつもりか。
久しぶりにこうして"約束の地(カナン)"を歩けば、かなりこの土地は浄化されたはずなのに、まだ処処に瘴気が残っているのが判った。
瘴気の残骸が散らばっている。
この付近は、"深淵(ビュトス)"と呼ばれていた。
かつて――
欲と凶気が渦巻き、一番瘴気が充ち満ちていた場所。

