ああ――
此処までか。
僕は目をつぶった。
芹霞は逃げられただろうか。
安全な場所に居るだろうか。
やけに時間の流れが低速度(スローモーション)に思えた。
まるで静止しているかのような時の流れ。
最期の…流れなんだろうか。
頼む。
三沢さん、芹霞を生かしてくれ。
煌、桜。
僕の私情を優先させてごめん。
もう僕のことはいいから――
芹霞を守ってやってくれ。
僕の代わりに――。
どうか芹霞を!!!
櫂…。
此処までだ。
此処までが僕の限界。
櫂…。
どうか…戻って来てくれ。
お前は皆の心の要。
芹霞に愛された唯一の男。
櫂…。
お前は僕の…
自慢の従弟だ。
負けるな。
僕のように…
負けるんじゃない。
芹霞を残すな。
『玲くん…』
芹霞。
『玲くん…?』
芹霞。
「きっちりと――
お送りいたしますわ」
芹霞。
『ねえ…玲くん…』
芹霞。
爆風が僕の髪を揺らす。
『玲くんってば…』
ああ…
君の声が聞こえるよ…。
君の…少し怒ったような声が。
可愛いね…。
可愛い声に包まれて僕は…。

