それしか方法はない。
僕も一緒に生き延びようとするから、話は難しくなるんだ。
僕が此処で、例えひと時でも全ての攻撃を食い止めれば、少なくとも芹霞も三沢さんも無事なはずで。
それは単純な解決方法。
要は、芹霞達が無事に――
逃げ切りさえすればいい話。
僕のことなど――
考える必要はない話。
「早くッッッ!!!」
「随分と献身的なことですわね。全ての攻撃を食い止められるとでも思っているんですの?」
6つの鉄環手が空に放たれる。
僕は宙に舞いながら、その1つを掴んで、まるでテニスのように他の環を打ち返していく。
車に向かわせては駄目だ。
天井がない車は…
上から攻めてくれと弱点をひけらかしているようなものだ。
「三沢さんッッッ!!!!」
「だけど!!!」
「男なら――
愛する人を守りたいという矜持、
汲み取ってくれッッッ!!!!」
来る。
ああ――
大勢…波のように押し寄せて来る。
「早く、行ってくれッッッ!!!!」
僕はありったけの声で叫んだ。
僕が…食い止めるから。
時間稼ぎしている間に。
早く…
早く!!!
「…くそぉぉっ!!!!!
死ぬなよーーーッッ!!!」
「え? やだ…ちょっと!!!なんで動かすの!!!?
玲くんと一緒じゃなきゃやだ、
――クマ、クマ!!!?」
「毛、毛をひっぱるなッッ!!
守りたい矜持…守れない絶望。
それが下した決断なのなら!!!
嬢ちゃんッッッ!!!
あいつは…男なんだ、男なんだよッッ!!!」
「言われなくても判ってる!!!
玲くんは――」
「嬢ちゃんが好きなんだよッッ!!!
命かける程ッッッ!!!
惚れ込んでいるんだよッッッ!!!
俺は――
嬢ちゃんを安全な場所に連れるッッッ!!!」
ありがとう、ありがとう。
「クマクマクマ!!! 冗談よして…どうしてドアが開かないの!!!?」
「例え毛を毟り取られても車を出すッッッ!!!
俺のように"絶望感"をあいつには味合わせたくないんだッッッ!!!」
そして――
「やだやだやだッッッ!!!
玲くんッッッ!!!!
玲くーーーーんッッッ!!!!」
その声を最後に、車は猛速度で走り去った。

