「『白き稲妻』来い、突っ走る!!!」
三沢さんの声と、エンジンのかかる音。
「玲くん、早く!!!」
隔たりの無い車の天井部分からひょっこり顔を出して、芹霞がぶんぶんと手を振って僕を手招く。
「逃げれると思うのならどうぞご自由に?
私達は地獄の果てまで…追いかけますわ…」
子供らしからぬ嫣然とした笑い。
僕は――ぞくりとした。
その表情ではない。
それに呼応したように――
その後ろに居る多数の制裁者(アリス)が、
同じような笑いをしたように思ったから。
まるで――
"複製(コピー)"のようで。
否――
"分裂"と言った方が妥当か。
その思いで状況を再確認すれば――
不可解なことに気づく。
夥(おびただ)しい数の制裁者(アリス)が、
皆一様に同じ"気"を持っているんだ。
――雅と。
どういうことだ!!!?
「私は、凱のようにお喋りではありませんわ」
雅が笑えば、一同が笑う。
雅は、判っていて質問自体を却下したというのなら、返答は"肯"ということ。
同じ気を持つのは、僕の勘違いではないということ。
「玲くん、玲くん!!! 早く早くッッ!!!」
雅とは違う様々な背格好の制裁者(アリス)。
視覚に惑わされて、目から捉えられる気配は複数あれど、持つ気配が一緒であるというのなら。
「幻ではありませんわよ?」
大概…雅もおしゃべりのようで。
それがヒントとなりえるのなら。
同じ気を持つ集団が存在しているのは現実のことで。
何故なのか理由を考えるよりもまず、
困窮した状況にいることを再認した僕。

