「なあ――…」
僕の煩悶を知ってか知らずか、三沢さんが声をかけてきた。
「"世紀のスクープ"なのに、報道陣が、あの塔に対して何も騒いでいないというのが引っかからないか?」
確かにそうだった。
空にヘリは飛ぶけれど、それは塔というよりは…ただ巡回しているだけのようにも見えてくる。
何より辺りが静か過ぎて。
「何で無関心でいられる? 俺なら飛びつくぞ? まあ報道陣の大方、KANANでの"重大発表"にとられて、人が居ないのは判るが」
"約束の地(カナン)"。
櫂…。
お前大丈夫か?
心がぎゅっと締め付けられる気がした。
"約束の地(カナン)"で、久涅は何かを画策している。
駆け付けて、櫂を守りたい。
だけど!!!
「玲くん…? 寒いの? 震えてるね」
芹霞が繋いだままの僕の手に息を吹きかけて、温めてくれた。
色々と不安だけが大きくなっている。
僕は――
芹霞と"お試し"をしていていいんだろうか。
僕は――
芹霞と"お試し"をしなくていいんだろうか。
僕は…。
僕は…。
そんな時だった。
キキーッッ!!!
車が突如急ブレーキで止ったのは。

