「七瀬紫茉が…何で周涅に拉致されたのか、その理由を朱貴は知っているんだな?」
周涅に拉致されたことに対しては動じなかった朱貴。
全てに判っていたから…
あんな傷を作ってまで、106も結界を解いていたのだろう。
そう、あんな傷…。
私は目を細めた。
あれだけの傷が…
塞がりかけていたから。
私の記憶では、腕に大きな火傷の痕があったのも…今はなく。
1つの"可能性"を考えた私は――
「俺は緋影に連なる者じゃない」
朱貴のひと言でそれを却下された。
緋影以外にも、回復の早い肉体を持つ人間がいるのか。
「――判った。
その条件を呑もう」
濃灰色の瞳がまっすぐ私に向いて。
横ではまだ、ぎゃんぎゃん、きーきー。
「だから協力しろ」
いつも上から目線の朱貴だったが…やはり七瀬紫茉が絡むと此処まで変わるのか。
それ程、彼女が大事なのか。
正直――
もっと難航するかと思っていたのだ。
それだけ、七瀬紫茉の気配を隠す周涅が周到なのか。
それだけ、七瀬紫茉がおかれた環境が特殊なのか。
朱貴が七瀬紫茉を守っているのは、恋情だけなんだろうか。
何一つ、彼らのことについては判らない。
皇城家の巫女らしい七瀬紫茉。
実の兄に拉致されて、そこから奪い戻すなんておかしい話だけれど。
朱貴の周辺にも、何かが動いている。
私達の周辺にも、何かが動いている。
それは偶然?

