「10年前…突然いなくなってそのまま。奥さんは三沢さんの前で、発狂の末に自殺。当時三沢さんは名の知れたハッカーで引き籠もっていて、家族省みなかったからこの結果になったと悩み、同時に……犯人に一番効果的な復讐をと、得意分野たる電波による弾劾、マスコミを使おうとし、マスコミに務めながら闇に葬られそうな10年前の情報を集めているんだ」
クマ男…。
その毛に隠された真実は、何て哀しい…。
「そんなこと玲くん知るなんて…仲がいいんだね」
「同じだからね」
玲くんは哀しげに笑った。
「自分の前で――
家族が発狂して自殺するのは…」
あたしは言葉を詰まらせた。
「僕達は、互いを哀れんで…それで成り立つ"同志"さ。実際の処、三沢さんだって何処まで僕に心を見せているか判らない。"あの"場面を見て、温かい心のまま居られるのは困難だ」
母親の発狂。
玲くんをトラウマにさせているのだろう。
温かい心なら…
「玲くんだって、十分温かいじゃない」
そう言うと、玲くんは更に哀しそうに笑った。
「僕は…卑怯すぎる、非情な奴だ」
そう言うと唇を噛んで、俯いた。
「そんなことないよ、玲くん!!! 玲くんは優しいよ!!!」
ゆさゆさと玲くんの肩を揺らしながら、必死にあたしが叫べば、
「ありがとうね…」
泣きそうな玲くんの顔。
本当に判ってくれているのかな。
玲くんは優しい。
温かい人なんだってば!!!
「玲「聞こえん、もっと大きく話せッッ!!!」
クマの怒声が割り、玲くんは顔を"苦笑"に変えた。
「彼が上岐妙の過去を調べたのは、社長の黒い噂がきっかけかもしれないけれど…"10年前"だからだったんだろうね」
そう言いながら、顔を強張らせて。
「APEXで少し聞いたんだ」
――10年前、俺の娘と同様に消えた近所の子供が何人か居るんだ。"何か"隠されているかも知れない。
「――ってね」
「"何か"?」
「三沢さんは"共通項"から理由を探している。今、三沢さんが握っている"スクープ"ネタが、過去に繋がるものか…今現在のものかはよく判らないけれど、とにかくこの人は突っ走る人だから…」
全力疾走するクマを思い浮かべた。
そんな会話をしている間、運転席からはクマの大声。
「だから、聞こえんって!!! もっとはっきり…え? ……。……は!!? 何でヘリの中!!? お前さん居残り組の筈…逃げたって……はああああ!!?」
クマ男の驚いた声に、あたし達はクマ男を見つめた。
「TBSが…サカスが壊滅だと!!!?」
は?

