そんなことより――
恐るべし、ボンドカー。
"セーフティーモード"や"加速モード"つきだとは…。
音声認識まであるなんて!!!
――あははははは~。
「う、方向…運転ハマカセトケ…?」
クマ男の声は機械音のように抑揚無く、ぎこちなくハンドルを操る。
「玲くん……」
「………」
「よかったね、助かったよ?」
「………」
「ありがとうね、玲くん…」
「………」
「………」
「………」
無言で俯いたままの玲くん。
最早かける言葉も見当たらなくなったあたし。
やがて玲くんは、顔を両手で覆うようにして…座席に丸まった。
凄い…。
耳まで…真っ赤だ。
「何でこんな…羞恥プレイ…」
玲くんの声は涙声だ。
あたしは…玲くんの足元に落ちていた青いメモを取った。
『ブレーキロック解除には、
レイクンの愛が必要!!!
さあ夜空に向かって叫ぶんだ。
君の愛が奇跡を起こす!!!』
愛の処だけが青文字でやけに大きく書かれている。
「ジェームスボンドだって…
ボンドカーでこんなことしなかったじゃないか…」
ああ、玲くん…首筋まで真っ赤っか…。
余程恥ずかしかったらしい。
あれだけS.S.Aでは人前でちゅっちゅ&とろりだったのに。
だけど…凄い決断力だね。
よくこんな紙切れだけで、
あんなこと…
大声で言う気になったね、玲くん…。
もし叫んで、音声認識されなかったら、
どうする気だったんだろう?
ねえ。音声認識ってさ、玲くんの声であれば…どんな言葉でもよかったんじゃないの?
そんな疑問も湧いたけれど。
何だか玲くんが更に沈みそうだから黙っていた。
「僕…氷皇が大嫌いだ…」
ぼそり。
涙声の玲くん…。
どんまい…。
そして――
「この屈辱…覚えておけよ…」
えげつない玲くん…HELLO…。

