シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



「なあ朱貴、あと2つの結界ってのは何処にあるんだ?」


小猿の問いに――

朱貴は濃灰色の瞳をすっと細めた。


「なくなってる…」


俺は…桜と小猿と顔を見合わせた。


まさか…。


「俺の偽鏡から派生した偽者朱貴と…」

「周涅のフリした計都もどきの人形は」



「…残る2つの結界だったんだろう」


桜が、俺と小猿の言葉を締めてくれた。


「そして多分、朱貴が106の結界を解いていなければ、私達は朱貴に出会えなかったのかもしれない。結界という名の陣に阻まれて」


朱貴が傷ついて解いていたという結界。


そんな危険な結界の残り2つを解いて、

華々しく有終の美を飾ったのは…。


「小猿…」

「ワンコ…」


俺達は手を取り合って。



「「無傷にいる俺達って

――実はすげえな!!!」」



「朱貴の53分の1しか活躍してないだろうが!!!」


桜の言葉は無視だ無視。


だけど桜は不穏なことを呟いた。


「だったら――


最後の黄幡計都らしき気配は…


何だったと言うんだ?」


確かにそうだ。


偽物朱貴に触れれば危険な気はしたけれど、

偽物周涅に触れても…結局は全て幻覚だった。


異質なんだ。


だけど解けたというのなら。

俺達がそれを乗り切ったんだというのなら。


今、優先して考えなくてもいいと思う。

それは桜も同じだったらしい。


今一番に考えるべきコトは、朱貴を自由にすること。


そう、結界が全て解けたというのなら。


「108解けたというのなら、朱貴の枷…もう外れるんじゃねえのか?」


俺の問いに、朱貴が再度自分の力で枷を解こうとしたけれど…無理だった。


「枷外すにはまだ何か条件がいるのか? どうするよ? 両手両足だからな…このままだと動けねえよな」


その時だ。


「なあワンコ。紫堂櫂が黄幡会の塔で繋がれてたのも、この枷じゃなかったか?」


腕を組みながら、小猿がそう言ったのは。