「なあ朱貴、あと2つの結界ってのは何処にあるんだ?」
小猿の問いに――
朱貴は濃灰色の瞳をすっと細めた。
「なくなってる…」
俺は…桜と小猿と顔を見合わせた。
まさか…。
「俺の偽鏡から派生した偽者朱貴と…」
「周涅のフリした計都もどきの人形は」
「…残る2つの結界だったんだろう」
桜が、俺と小猿の言葉を締めてくれた。
「そして多分、朱貴が106の結界を解いていなければ、私達は朱貴に出会えなかったのかもしれない。結界という名の陣に阻まれて」
朱貴が傷ついて解いていたという結界。
そんな危険な結界の残り2つを解いて、
華々しく有終の美を飾ったのは…。
「小猿…」
「ワンコ…」
俺達は手を取り合って。
「「無傷にいる俺達って
――実はすげえな!!!」」
「朱貴の53分の1しか活躍してないだろうが!!!」
桜の言葉は無視だ無視。
だけど桜は不穏なことを呟いた。
「だったら――
最後の黄幡計都らしき気配は…
何だったと言うんだ?」
確かにそうだ。
偽物朱貴に触れれば危険な気はしたけれど、
偽物周涅に触れても…結局は全て幻覚だった。
異質なんだ。
だけど解けたというのなら。
俺達がそれを乗り切ったんだというのなら。
今、優先して考えなくてもいいと思う。
それは桜も同じだったらしい。
今一番に考えるべきコトは、朱貴を自由にすること。
そう、結界が全て解けたというのなら。
「108解けたというのなら、朱貴の枷…もう外れるんじゃねえのか?」
俺の問いに、朱貴が再度自分の力で枷を解こうとしたけれど…無理だった。
「枷外すにはまだ何か条件がいるのか? どうするよ? 両手両足だからな…このままだと動けねえよな」
その時だ。
「なあワンコ。紫堂櫂が黄幡会の塔で繋がれてたのも、この枷じゃなかったか?」
腕を組みながら、小猿がそう言ったのは。

