「これは周涅の術なのか!!?」
小猿が憤ると、朱貴は何でもないような顔で頷いた。
「ええ。僕を隔離する為に」
隔離の為に結界を108かける方もかける方だけれど、106まで解く方も解く方だと思う。
俺だったら…何個まで解けるんだろう。
「何で隔離するんだよ!!!」
「…何ででしょうね…」
判っている。
そんな気がした。
理由が判っていて、朱貴はそれをぼかし…
――そして俺を見た。
「お前…"戻った"のか?」
濃灰色の瞳が絡みつく。
僅かに…憂愁の色を瞳の奥に湛える様は、どことなく――緋狭姉を思い出してしまった。
顔など何も似ていないのに…何故か彷彿してしまったんだ。
"戻る"とは――
蛆のない身体にという意味か、
それとも…
制裁者(アリス)から仲間の元にという意味か。
きっと…そのどちらもなんだろう。
ああ…。
記憶の最後に俺は…朱貴に、芹霞を連れるように頼んだんだっけ。
「"戻れた"のかどうかは判らないが、俺はただ…"戻りたい"。…それだけだ」
戻る為にどんな苦しみがあろうとも…戻りたいんだ。
「お前も…仲間に恵まれたな」
微かに…朱貴が微笑した気がした。
うわっ。
何だよ、こいつ…。
何て艶やかに笑うんだ?
玲や久遠とも違う…大人の魅力って奴か?
男の俺でもくらりときてしまったけれど…
"お前も"
それは誰を引き合いに出しているのだろう。
朱貴は常に1人だ。
小猿と七瀬は…仲間というより、朱貴が庇護している関係。
だとすれば、誰を思ってる?

