シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



「これは周涅の術なのか!!?」


小猿が憤ると、朱貴は何でもないような顔で頷いた。


「ええ。僕を隔離する為に」


隔離の為に結界を108かける方もかける方だけれど、106まで解く方も解く方だと思う。

俺だったら…何個まで解けるんだろう。


「何で隔離するんだよ!!!」

「…何ででしょうね…」


判っている。


そんな気がした。


理由が判っていて、朱貴はそれをぼかし…


――そして俺を見た。


「お前…"戻った"のか?」


濃灰色の瞳が絡みつく。


僅かに…憂愁の色を瞳の奥に湛える様は、どことなく――緋狭姉を思い出してしまった。


顔など何も似ていないのに…何故か彷彿してしまったんだ。


"戻る"とは――

蛆のない身体にという意味か、

それとも…

制裁者(アリス)から仲間の元にという意味か。


きっと…そのどちらもなんだろう。


ああ…。

記憶の最後に俺は…朱貴に、芹霞を連れるように頼んだんだっけ。


「"戻れた"のかどうかは判らないが、俺はただ…"戻りたい"。…それだけだ」


戻る為にどんな苦しみがあろうとも…戻りたいんだ。


「お前も…仲間に恵まれたな」


微かに…朱貴が微笑した気がした。


うわっ。

何だよ、こいつ…。


何て艶やかに笑うんだ?


玲や久遠とも違う…大人の魅力って奴か?


男の俺でもくらりときてしまったけれど…


"お前も"


それは誰を引き合いに出しているのだろう。


朱貴は常に1人だ。


小猿と七瀬は…仲間というより、朱貴が庇護している関係。


だとすれば、誰を思ってる?