シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
桜と小猿が俺を見る。


俺はぶれない。


自分で七瀬を守りたいとするその想いが判るから。


愛する女を守るのに、他の手を必要としないという…その心が痛い程判ったから。


「これは…間違いなく朱貴だ」


俺の声に同調したように、桜が朱貴の傍に寄った。


「皇城翠。朱貴の着替えと、血を拭く濡れたタオルをもってこい」


小猿はあわてて別室に行き、着替えと濡らしたタオルを持ってきた。


「朱貴、紫茉とは追手の目を眩ませる為に、別方向からこっちに向かうことにしたんだ。あいつの体術はそれなりにそれなりだから、大丈夫だって。もう此処に着くはずだから」


「……しかし…」

「大丈夫。何かあったら俺に電話入るようになってるし…」


「お前…充電切らしてたじゃねえかよ、コラ」


小猿は飛び跳ねるように、慌てて何処からか持って来た充電器で充電始めた。


朱貴は、何とか七瀬を待つ姿勢をとったようだ。


本当にとことん小猿に甘い男だ。


きっと本心、探しに行きたくて仕方が無いんだろう。


桜は、小猿が用意したタオルで、朱貴の血糊を拭いている。


先程までのように、警戒している雰囲気がなく。


「お前…、俺の言うこと信用するのか?」


何だかそれは意外で。


「――私だって心はある。お前の言葉を真実だと思った。ただそれだけだ」


「さ~く~「た~ま~き~!!!」


俺の感動を小猿がぶち壊した。

空気読めよ、この猿!!!


「今、今この枷切ってやるからな!!! んーんー!!!」


猿の尻より赤い顔をして、力一杯鎖を引っ張っても何しても、切れないらしい。


「ちょっと待ってろ!!!」


また走り去ったと思ったら、ペンチだのニッパーだののこぎりまでもが入った大きな工具箱を持ってきた。


完全猿小屋と化してはいるが、ここは七瀬の家だ。


よくこんなものを探し出してこれるな。

野生猿の勘って恐ろしい。