ゆるやかなウェーブかかった煉瓦色の髪から覗く…濃灰(ダークグレイ)色の瞳。
動けない体から迸(ほとばし)らせる、突き刺さるような攻撃的な視線。
ここまで身体はメタメタにやられているのに、闘志だけは勢いがある。
高邁な誇りを傷つけられた屈辱に耐え忍びながらも、例えどんな惨めな姿晒そうと…それでも心までは屈しないという、そんな男の矜持を感じて。
それでなくとも盛大な力を見せ付けて、俺達の上に居た朱貴が…こうして俺達の目下で両手両足繋がれもがいていて。
それだけでも、朱貴だったら恥辱のはずなんだ。
その状態で、次に口を開いたのは――
「紫茉は…一緒に居ないんですか?」
七瀬のことで。
「翠くん…紫茉は!!?」
「途中、別れて…」
「何ですって!!!?」
途端、朱貴の身体が生気を吹き返したかのようにびくんと震え、朱貴は枷を外そうと暴れ出したんだ。
手首足首の裂傷に、枷が食い込み…更なる傷を広げているようで。
言わない。
それでも言わないんだ。
この枷を外して欲しいとは。
どんなに無様な姿を披露しても、自分の力だけで何とかしようとする。
傍観者が助けられるかどうかの問題は別にして、救済の手を他に委ねず、無謀な試みを続けるのはあまりに不合理なことだろう。
だけど――
それは矜持。
この男の矜持。
だからこそ思ったんだ。
俺は――
「朱貴、だ」
そう確信したんだ。

