シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



ゆるやかなウェーブかかった煉瓦色の髪から覗く…濃灰(ダークグレイ)色の瞳。


動けない体から迸(ほとばし)らせる、突き刺さるような攻撃的な視線。

ここまで身体はメタメタにやられているのに、闘志だけは勢いがある。


高邁な誇りを傷つけられた屈辱に耐え忍びながらも、例えどんな惨めな姿晒そうと…それでも心までは屈しないという、そんな男の矜持を感じて。


それでなくとも盛大な力を見せ付けて、俺達の上に居た朱貴が…こうして俺達の目下で両手両足繋がれもがいていて。


それだけでも、朱貴だったら恥辱のはずなんだ。


その状態で、次に口を開いたのは――


「紫茉は…一緒に居ないんですか?」


七瀬のことで。


「翠くん…紫茉は!!?」

「途中、別れて…」

「何ですって!!!?」


途端、朱貴の身体が生気を吹き返したかのようにびくんと震え、朱貴は枷を外そうと暴れ出したんだ。


手首足首の裂傷に、枷が食い込み…更なる傷を広げているようで。


言わない。

それでも言わないんだ。


この枷を外して欲しいとは。


どんなに無様な姿を披露しても、自分の力だけで何とかしようとする。


傍観者が助けられるかどうかの問題は別にして、救済の手を他に委ねず、無謀な試みを続けるのはあまりに不合理なことだろう。


だけど――


それは矜持。

この男の矜持。


だからこそ思ったんだ。



俺は――


「朱貴、だ」



そう確信したんだ。