「小猿……」
とりあえず目の前の光景だけでも何とかしなければ。
真実かどうかは、やはり"朱貴大好き"猿の感覚に頼るしかなくて。
その小猿は――
「朱貴…ひっくひっく…」
大粒の涙をぼろぼろ流している。
偽者の可能性も頭に入っているのに、小猿にはこの真紅色の情景が衝撃的のようで。それでも飛びつかないのは、直前のことを学習したからだろう。
情に動かされて触れた途端にアウト…。
今までの流れからして、その危険性は大いにあるんだ。
しかしこれが本物であるならば、一秒でも早く回復させてやりてえ。
「ワンコ…駄目かな、朱貴助けたら…」
「気持ちは判るけどよ、お前…さっき俺が言ったの覚えてるか? 心で…」
少し先輩風吹かせてみれば、
「お前もひっかかった癖に、何を威張って偉そうに」
桜に鼻でせせら笑われた。
言いたいことは山にあれど…反論出来ねえ俺。
はいはい、桜様の言う通りです。
「かなりの種の結界が頑丈にここにかけられていた…名残がある。気味悪いほど、"あらゆる種"だ。何だこれは…。
もし此処にいる朱貴が真実であるならば、それから逃れようと…我武者羅に結界を解き、そして……」
「力尽きて倒れたのか……」
俺のぼやきに真っ先に反応したのは、
「尽きて……ません。
本当に、失礼な…
紫堂の犬ですね…」
その声は――
「「朱貴!!!?」」
俺と小猿は同時に声を上げて飛び上がった。

