その時――
目の前に、黒い影が…赤銅色の瞳を覆い隠した。
「人間が――
誰かを許す権利がないのだとしたら――」
それは桜。
「お前が煌を裁く権利もない」
小さい小さい…
「愛する心は…
お前にとやかく言われるものではない」
だけど大きい桜。
桜は――
顔だけこちらを振り向けた。
「煌、揺れるな。この話は…"終わった"話。"今更"の話」
"揺れるな"。
桜に言われてたじゃないか。
ああ、だから事前に桜は云い難い話をして、俺を揺らがないように予防線を張ってくれていたのに。
桜の危惧した通り…
俺の精神は脆弱過ぎる。
それでも――
これですんだのは、桜のおかげだ。
揺らがない、桜のおかげなんだ。
「へえ? 如月くんを庇うんだ。いいねえ、そういう仲間"ごっこ"。忘れちゃったの? 君が僕にこてんぱにやられたこと」
「私は――
お前になどはやられていない」
それは毅然とした口調で。
「自分のことを"僕"と呼ぶ男に、
煌を"如月くん"と呼ぶ男に――
私はやられた覚えはない」
え?
確かに――
周涅は今まで自分のことを"周涅ちゃん"
俺のことは犬扱いしていて。
「弁に熱が入りすぎて、ボロを出したな」
周涅じゃないのか?
「皇城翠!!! どうだ!!?」
まるで示し合わせていたかのように、
桜の怒声に呼応したのは小猿で。
「うん!!! 大嫌いな"空気"が違う!!!
こいつは周涅じゃない!!!」

