シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
「なあ…桜。自警団ってさ、

見回り対象は俺達みたいな未成年だよな」


夜目でも鮮やかな橙色が、不思議そうな顔をしてこちらに向いた。


「自警団の活躍でガラの悪い若い奴だけ消えるのは判るけどさ、何でその対象外の優等生とか大人まで消えるんだ?

ガラ悪いの居なくなったのなら、安心して外歩けるはずだし、大体大人だって自警団に風紀が正されたと感謝してるくらいなら、敵対関係ではないだろう?

新宿もそうだったが…数少ない通行人は、やけに周囲にびくびくし、自警団はすげえ堂々と歩いている。

これなら…自警団の見廻りは、ただの不特定多数の縛り付け。威圧的行為みたいじゃねえか」


そんな中――

視界に…1人の自警団が1人の男の腕を掴んで、何処かに連れようとしているのが目に入る。


「あれよ…オジサマじゃねえか。何で自警団が連行する?」


呟くと同時に、煌が屋根からひらりと地面に飛び降りた。


「おい、待てよ」


白い服を着た自警団が立ち止まり、


「"ガイダー"、お疲れ様です」


無表情で一礼する。

「お疲れじゃねえよ。お前らの仕事は、素行悪い若者の…風紀を正すことだろ? お前の目は節穴か? その脂ぎった禿頭と出っ腹のよれよれ男が、お前には"若者"に見えるのか?」


「これは心外。今や自警団の権限は、若者に留まらないのをご存じないとは。こいつは…壁に放尿していた罪深き者。処罰に価します」


「おい。立ちションが処罰って何だよ?」


「景観を損ねることは大いに問題。野良犬でもあるまいに」


年老いた男は真っ青な顔でぶるぶる震えている。


「じゃあ飼い犬だったらどうするんだよ」


犬に噛み付く馬鹿蜜柑。
 
意識的か無意識的かよく判らない。


「当然、飼い主が処罰対象」


いつの間に――

"矯正"が"処罰"に成り代わったのか。


少なくとも、櫂様が居た頃は…矯正に留まっていたはず。