玲様の次期当主としての待遇は、櫂様のような賞賛されるべき待遇ではないはず。それでも玲様が次期当主をされているのは、それを我慢してまですべきことがあるからで。
――約束、して欲しいんだ。
櫂様を助ける手がかりを得ようとしているからであるはずで。
玲様は、そう簡単に…次期当主を剥奪されるわけにはいかないはずで。
だから行われた、玲様の宣戦布告。
してやられたと笑って許すような豪快な当主ではない。
仮に破談の最低条件が、芹霞さんの心を玲様に向けさせるということであっても、そしてその結果をテレビで放映させたという形にとったと言い張ったところで、実の息子でさえ蔑ろにする当主にとっては、玲様を…道具としての縛りつけるだろう。
それを見越しながらも、玲様は宣言された。
結婚するつもりがないと。
芹霞さんだけしか選ぶつもりがないと。
それは…紫堂に流されて生き続けてこられた玲様の、
初めての…明確な"反抗"の意思表示。
それは苦し紛れの暴挙にも似た…賭けのような危険性を秘めている。
そうしないといれない程――
玲様は追い詰められている。
切迫しているんだ。
煌に…懇願して頭を下げる程なのだから。
私は、私達は――
そんな玲様を助けたい。
そう思っているのは、きっと私だけではない。
煌だって同じだ。
「……広尾に急ぐぞ。小猿と合流しよう」
「そうだな」
私達に出来ることは――
皇城サイドを掌握すること。
それにはまず…皇城家次男が必要だ。
私達は…広尾に走った。

