公共の場を用い、全国規模にて…
自分には恋人がいるのだと宣言された。
そしてその恋人と結婚目前であり、
他が入る余地は何もないと…
そうはっきりと宣言されている。
証言者は…
不特定多数の視聴者だ。
マスコミだって、紫堂財閥の未来を担う次期当主の宣言に…真偽を問い質しに集まるだろう。
それだけ、玲様の声は真剣みがあった。
声を聞くだけでも、付き合いが長い私には判る。
玲様は本気の想いを口にしている。
逆に言えば、本音を見せねばならない状況だったと言うことだ。
そして玲様は、ご自分の想いを貫く為に…かなりのリスクを負ったことになる。
皇城側がこの映像を見たら――
何らかの…紫堂に対する反応を返すだろう。
婚姻話を白紙に戻すか。
或いは――
抗議を申し立てて圧力をかけ…強行的に進めさせるか。
もし皇城側が、玲様が誰を隣に置いたどんな状況であれ、あくまで"次期当主"としての婚姻話を続行させる気であるのなら。
紫堂財閥の最高責任者である当主が、"次期当主"たる玲様にもたらすのは…庇護ではなく、剥奪。
それは芹霞さんと培ってきた"自由"か、
"次期当主"という肩書きか。

