シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
「何で…せりがこの格好?」


久遠の…抑揚のない低い声。


「玲か…」


久涅は舌打ちをしながらそう言った。


「宣戦布告か…」


画面に映る玲の姿。


暫く会っていなかった俺の従兄は――


『彼女を愛してます』


俺が言いたくても言えない言葉を、笑顔ながら真剣な顔で言っていて。


俺が…抑えねばならない想いを迸(ほとばし)らせて、何一つ隠そうともせず。


そして、芹霞を妻だと呼んだ。


それに対して、芹霞は否定もせず、拒絶もせず。


その空気は…甘いものでしかなく。


そこには、俺や他を排除したような…幸せすぎる2人の空気しか流れていなくて。


俺はただ――

見ていることしか出来なくて。


画面の中の2人を…

遠くからただ見ているだけで。


――紫堂櫂を愛してる!!!



俺は――。



『お似合いのお2人でしたね』

『相思相愛っていう感じが堪らないねえ』



要らぬコメンテータの感想。



俺は――。


――紫堂櫂を愛してる!!!


何でこんな場所で。



何で――


芹霞の横には…


俺ではなく玲がいるんだ?


俺の立ち位置だろうと、芹霞を守って欲しいと望んだのは俺なれど、ある程度の妥協は必要だと覚悟はあったなれど。


――紫堂櫂を愛してる!!!


何で…2人の空気が変わってる?


セリカトレイガシンミツスギル。


何で…ドレス姿だ?


ナニカガマエトハチガウ。


――紫堂櫂を愛してる!!!


何が起きてる、2人に。


画面は他の中継に切り替わっていたけれど、俺の頭の中には、芹霞と玲が依然残っていて。


芹霞…。


会いたい。


会いたいよ。


俺だって…

俺のものだと、宣言したいよ。


芹霞…。



俺は唇を噛みしめながら…手首に巻いた布をぎゅっと抑えつけた。


暴れる俺の心を抑えるかのように。