シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
「く、久遠様…」


弱々しい声が聞こえたと思ったら…蓮だった。


久涅に殴られたのだろう腹を押さえて、よろよろと現われ…


「!!!?」


そして俺を見て呆然とした。


それは凄い驚きようで。


「れれれれ蓮!!! 大丈夫か!!?」


遠坂がいつもの2倍増しの速度で蓮に抱きついて、何やら囁いている声が聞こえる。


俺のことを言っているのだろう。


ああ、全員に前で…こんな醜態晒すなんて。

絶対…芹霞には知られたくない。


「もういいかな、久涅。テレビ来るのはもう少しだろう? 支度したいんだけれど。どうせ此処もテレビ入るのなら、続きはその時でもいいだろう?」


「………。ああ、判った。テレビ中継で、色々お前に…隅々まで案内して貰うから、今はこの辺でやめておく。下に行こう」


そう、久遠と久涅はくるりと俺達に背を向けて。


俺は遠坂と蓮と素早く顔を見合わせて、息をついたが…


「ふ、そうそう。テレビには…凜も出て貰おう」


「「は!!?」」


遠坂と蓮は同時に素っ頓狂な声を出した。


嫌だ。

女装なんて…こんな姿、全国に晒したくない。


俺はぶんぶんと頭を横に振った。


「テレビに映れば…凜の家族から連絡が来るかも知れない。中々いいアイデアだろう…久遠」


違う。


そんな慈愛深いことを考えている訳ではない。


まだ疑いは晴れていないのか。


或いはもっと――


俺は直感したんだ。



「テレビが…愉しみだな」



久涅は――

何かを狙っている。



何かが起る。


何だ?


これは予感。