シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「これでいいか、久涅。凜は悲鳴すら上げられない。口が聞けない女っていうのは、表情を見るだけでも中々…加虐心をそそられるものだろう? まるで紫堂櫂をいたぶっている気分になって高揚する…」


本人だろうが!!!

何恍惚とした顔するんだよ、久遠!!!


「ほら、絶対服従だろ? こんなことをしても、オレには抵抗しないで耐える。睨み付けもしない」


足をどけろ!!!

俺の手の骨、砕く気か!!!


面白がるな、久遠!!!



「確かに、此処までされて声がでないということは…口は聞けないようだ。しかもあいつなら、やられっぱなしで耐えられる男じゃない」


耐えているだけだ!!!


「まだ疑うのなら、凜を脱がしてお前の相手をさせるか? どうだ? 紫堂櫂…及び自分そっくりな女を抱く気分は中々なものじゃないか」


冗談じゃない!!!


全身鳥肌が立った。


「俺は、自虐的趣味はない」


初めて…久涅がまともで安心した。


「何故、凜を…紫堂に報告していなかった?」


まだ…疑いが晴れていないのか?


「従業員を含めて"約束の地(カナン)"の住人は、全てを紫堂に報告することになっているはず。名簿にその女の記載はなかった」


「見間違いじゃない?」


突如割り込んだのは、遠坂で。


「名簿に載ってるよ、ちゃんと」


そして遠坂はキーボードを叩いた。


「ボクも凜の素性が気になって、こっそり"約束の地(カナン)"のファイル覗いていたんだけれど、これだろう? 紫堂財閥への報告ファイル…」


それは過去、俺が数度目を通したことのある…名簿データで。


「ほら、ちゃんと此処に…。

登録時期は…久遠の言う通り、数週間前じゃないか。

久涅、見逃してたんだよ」


遠坂が…猛速度でキーボードを叩きつけていたのは、このデータを追加する為だったのか。


「お前、こっちからのデータ、よく見ろよ。変に疑うな、気分悪い」


よくもまあ…そんな呆れ顔の演技が出来る。