しかし――
「何だよ、黙り込んで」
玲の金緑石が久遠の手にあったとは…。
芹霞の手から無くなってしまったことに、玲が心を痛めていたことを知っている。
この男――
くすねていたのか!!!
糾弾されるべきは久遠であって、俺ではないというのに。
「大体礼くらいもいえないのか、17にもなっていて。
そんなんだから、紫堂から追い出されて…殺されるんだ。
お前はな、態度が大き過ぎなんだよ。礼儀というものに欠けている。
まずは、年上を敬え!!!」
こいつの実年齢はかなり上だ。
一応…玲より1つ年下の19歳を自称しているくせ、玲に対しても敬う気配は何もなく。
金緑石を堂々とくすねてしれっとしているくらいだ。
大した大物だ。
「聞こえているんだろう!!?」
きっと…
俺を見ただけで、何か言いたくなるんだろう。
目障り過ぎるから、視界に入っているだけでどうにかしたくなる。
それは――お互い様だ。
「何か言えよ!!! お前まで黙秘か!!!」
放っておけばいいのに、食いついてくる。
そういう点では、本当に律儀だと思うけれど。
ただ助けてもらった今回は、俺には分が悪い。
俺だって人としての最低限度の礼節はあるつもりだ。
だから仕方が無く――
俺は口を開こうとして…
「……!!!?」
初めて、声が出ないことに気づいた。

