「正直、オレも思ったよ、紫堂櫂が女装しているって。だから当初、いろいろ試して剥いたけれど…」
試す?
剥いた…?
「女だった。
だったら、色々使い途はあるだろう?」
使い途…?
「口が聞けないから素性は知らないが、生意気な"目力"思えば…そこそこ育ちは悪くないはずだ。
だったら、拾って面倒見るオレが、落ちぶれたシンデレラのように、凜を小間使いにしても…夜伽にしても…どう扱き使おうとオレの勝手だろう?」
よ、夜伽…?
下世話な言葉が…久涅の興味を引いたらしい。
俺の気分は最悪だ。
何が嬉しくて久遠の夜伽などしないといけない?
そういう目で見られるのすら耐え難い羞恥だ。
「お前のペットの割には…随分と、俺に噛み付くな。まるで個人的な恨みがあるような目を向ける」
ありありだ。
「凜は極度の人見知りで他人に心を開かない。だから初めて会う久涅に反抗的態度を取ったのだろうけれど…オレには服従させている」
今度は何だよ、俺はペット…奴隷かよ。
「凜?」
「ああ、蓮が態度が"凛々しい"からと、凜と名付けた」
俺は…凜という名前らしい。
よくも此処まで本当のような、白白らしい嘘をしれっとつくことが出来る。
「…服従ねえ…。見せてみろ、証拠を」
「……まだ疑うのか」
「あいつなら…お前に服従するはずないだろうからな。それに…口が聞けないフリをしているかも知れない」
久涅も馬鹿ではない。
くそっ。
「……ちっ。仕方が無い。凜、来い」
状況的に…久遠に逆らえない。
「手を床に置け」
何をやらかす?
仕方が無いからその通りにした。
すると――
「!!!!」
置いた俺の手を、久遠が足で踏み潰した。

