シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



「正直、オレも思ったよ、紫堂櫂が女装しているって。だから当初、いろいろ試して剥いたけれど…」


試す?

剥いた…?


「女だった。

だったら、色々使い途はあるだろう?」


使い途…?


「口が聞けないから素性は知らないが、生意気な"目力"思えば…そこそこ育ちは悪くないはずだ。

だったら、拾って面倒見るオレが、落ちぶれたシンデレラのように、凜を小間使いにしても…夜伽にしても…どう扱き使おうとオレの勝手だろう?」


よ、夜伽…?


下世話な言葉が…久涅の興味を引いたらしい。

俺の気分は最悪だ。


何が嬉しくて久遠の夜伽などしないといけない?

そういう目で見られるのすら耐え難い羞恥だ。


「お前のペットの割には…随分と、俺に噛み付くな。まるで個人的な恨みがあるような目を向ける」


ありありだ。


「凜は極度の人見知りで他人に心を開かない。だから初めて会う久涅に反抗的態度を取ったのだろうけれど…オレには服従させている」


今度は何だよ、俺はペット…奴隷かよ。


「凜?」


「ああ、蓮が態度が"凛々しい"からと、凜と名付けた」


俺は…凜という名前らしい。


よくも此処まで本当のような、白白らしい嘘をしれっとつくことが出来る。


「…服従ねえ…。見せてみろ、証拠を」


「……まだ疑うのか」


「あいつなら…お前に服従するはずないだろうからな。それに…口が聞けないフリをしているかも知れない」


久涅も馬鹿ではない。


くそっ。


「……ちっ。仕方が無い。凜、来い」


状況的に…久遠に逆らえない。


「手を床に置け」


何をやらかす?

仕方が無いからその通りにした。


すると――


「!!!!」


置いた俺の手を、久遠が足で踏み潰した。