シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
そして――


「あははははははは」


突如久遠は笑いだして。


「何だよ、紫堂櫂が生きてて女装しているとでも思ったのかよ、お前」


大げさな程、笑いだした。


こちらが…呆気にとられる程。


「仮に紫堂櫂が生きてたとして。

あの男が矜持崩して、女装など受入れるわけないだろう。

せりに"男"と意識されなくて泣くくらい、"男"の矜持だけは一人前なんだ。そんなのが女装なんてしたら、さらにせりが遠ざかる。

第一気持ち悪くて見れたもんじゃないだろう。久涅、お前自分が女装した姿を想像してみろよ。イケてると思うか?」


――……。


久涅を見て、その女装を思えば――

俺は今、どんな化け物になっているんだろう。


久涅も…色々思い浮かべたのか、凄く嫌な顔をした。


こういう時、同じ顔でよかったと思う。



「まずさ、お前…紫堂櫂に近しい存在だったら、紫堂櫂の気性を考えてみろよ。あいつはふてぶてしい不遜な"子供"だけれど、喜んで女装する変態紫堂玲とは違うぞ? というか、紫堂の血筋って大丈夫かよ。お前も格好からしてまともじゃないよな」


玲…。



「きゃははははは!!!

れいくん、変態!!!」


「ぷぷぷ。変態な紫堂玲、ぷぷぷ」


堪えきれないというように、黙って傍観していた旭と司狼が笑いだした。


ああ、玲。


俺も散々言われているが、お前も散々言われてるぞ。


悪い。


俺…訂正したくても声がでないんだ…。


「師匠…この屈辱、いずれか弟子が…」


遠坂が、堅い決心をしたような顔で、鼻を啜っている。


「先刻も言ったが、オレは紫堂櫂が嫌いだ。

嫌いな奴を生き返せる程酔狂でもないし、自虐的でもない。

凜を拾ったのは――

紫堂櫂にそっくりだったから。

腹いせに扱き使ってやろうと思ったんだよ」


不機嫌そうにそう言って。


何だか信憑性がある気がするのが癪だ。