そして――
「あははははははは」
突如久遠は笑いだして。
「何だよ、紫堂櫂が生きてて女装しているとでも思ったのかよ、お前」
大げさな程、笑いだした。
こちらが…呆気にとられる程。
「仮に紫堂櫂が生きてたとして。
あの男が矜持崩して、女装など受入れるわけないだろう。
せりに"男"と意識されなくて泣くくらい、"男"の矜持だけは一人前なんだ。そんなのが女装なんてしたら、さらにせりが遠ざかる。
第一気持ち悪くて見れたもんじゃないだろう。久涅、お前自分が女装した姿を想像してみろよ。イケてると思うか?」
――……。
久涅を見て、その女装を思えば――
俺は今、どんな化け物になっているんだろう。
久涅も…色々思い浮かべたのか、凄く嫌な顔をした。
こういう時、同じ顔でよかったと思う。
「まずさ、お前…紫堂櫂に近しい存在だったら、紫堂櫂の気性を考えてみろよ。あいつはふてぶてしい不遜な"子供"だけれど、喜んで女装する変態紫堂玲とは違うぞ? というか、紫堂の血筋って大丈夫かよ。お前も格好からしてまともじゃないよな」
玲…。
「きゃははははは!!!
れいくん、変態!!!」
「ぷぷぷ。変態な紫堂玲、ぷぷぷ」
堪えきれないというように、黙って傍観していた旭と司狼が笑いだした。
ああ、玲。
俺も散々言われているが、お前も散々言われてるぞ。
悪い。
俺…訂正したくても声がでないんだ…。
「師匠…この屈辱、いずれか弟子が…」
遠坂が、堅い決心をしたような顔で、鼻を啜っている。
「先刻も言ったが、オレは紫堂櫂が嫌いだ。
嫌いな奴を生き返せる程酔狂でもないし、自虐的でもない。
凜を拾ったのは――
紫堂櫂にそっくりだったから。
腹いせに扱き使ってやろうと思ったんだよ」
不機嫌そうにそう言って。
何だか信憑性がある気がするのが癪だ。

