「娘。久遠と…此処で何をしている?」
そう久涅が遠坂に詰め寄れば、遠坂は真っ青な顔をしてぶるぶる震えて。
もう…
何か画策していましたと、体現しているようで。
"久遠と"
久遠の嫌疑は晴れてなかったのか。
だから…単身で"探索"に乗り出したと思えば…
そこまで状況は…久涅は甘くはなかったか。
どうする?
潔く正体ばらして、久涅と闘うか?
司狼と旭は、遠坂の手が上がるのを心待ちにしている。
期待に目がきらきらしている。
3人で…乗り切れるか、此処を。
その時――
「オレが女助けたら駄目なのかよ」
気怠げな声がして。
上半身は裸、下半身にバスタオルを巻いた…
風呂上がりそのままという格好の久遠が、壁に背を凭れさせるように立っていた。
気配すら気づかせなかった久遠。
髪から、乾かし切れていない雫がぽたぽたと滴っていて。
無造作にそれを掻き上げる仕草は、
無駄に色気がありすぎだ。
多分…久遠なりに異常を悟って駆け付けたんだろう。
だが、表情には――
焦りも怒りも怯えも何もない。
ましてや、化け物じみているだろう俺を見て、眉を顰めることも笑いだすこともしない。
あくまで、この姿で当然というような堂々とした物腰で…
見事なまでに――
妖麗な顔から、その心情を窺い知ることは出来ない。

