「お前――」



床に崩れ落ちた遠坂が、手を挙げようとしているのが判る。

それを心待ちにしている2人がいるのも視界に入る。


二組の好戦的な目が輝いている。


きらきら、きらきら。



「女、お前の名は?」



"女"…だと?


玲などとは比較ならない…

明らかに気味悪い俺の"女装"。


どう考えても無理がありすぎるだろう。


化粧してカツラ被って、レースで縁取られた白エプロンカッチューシャ付きの…典型的マニア向けメイド服を着てるこの俺が、どうして女に見えるって?


「何故答えない、女」


遠坂のコスプレマジックか?

それとも久涅の目がおかしいのか?


それとも…油断させようとした"演技"なだけか?


遠坂が手を下げた。


遠坂は、"演技ではない"と踏んだらしい。


途端に子供2人が落胆し、

地団駄を踏んでいる。



「!!?」


視界の端で――

遠坂がかっと大きく目を見開いたまま、動きを止めている。

驚いているわけではないらしいが、鬼気迫って少し怖い。


「お前…俺の血を引くものか?」


どくっ。


酷似した顔だということには気づいているらしい。

だとしたら、やはり――


「本当の妹か?

それとも…また複製(コピー)か?」



"模倣"


何故かその言葉が蘇った。