シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
前回この約束の地(カナン)において。


俺とではなく、この男と生きようとした芹霞。

俺より先に、この男と"永遠"を約束していた芹霞。


更に厄介なのは、この男は…13年間も一途に芹霞を愛し続けているということ。

自堕落な生活を送っている癖に、芹霞に対しては潔癖でいようとしていること。


愛するが故に芹霞を突き放す…ひねくれた男。


しかしどんなに、芹霞を言葉や態度で拒もうとも、

芹霞に関わった途端に、瞳が赤く…激愛の色に染める。


飄々とした澄ました顔をして、

芹霞に侮蔑の色すら浮かべて――


本心は13年間も芹霞を求めている。


それが余計に、俺の機嫌を低下させる。


その上で――


「何だよ、紫堂櫂。前回以上に…情けない上に、そこまでの落ちぶれた無様な姿をオレに晒しておいて、それでもまだせりの騎士(ナイト)を気取ってるつもりか!!?」


何も判っていないのに、12年間の俺の想いを鼻でせせら笑い、

最初からこんな喧嘩腰で俺に突っかかってくれば。


好感なんて持てるはずもない。



更には、この男。俺と同じ闇使いで。


加えて――

死者も生き返らすことが出来る、"言霊"の持ち主。


古来より斎宮として名を馳せた、歴史ある各務の当主として相応しいだけの…その力を引き継いでいる。


認めたくはないけれど、頭もいい。


知識も記憶も優れ…だからこそ、謀(はかりごと)に必要とされ、"利用"されてきた。


体術も俺と五分五分。


夥(おびただ)しい女の相手をして放蕩三昧に暮らしてきて、独特の怠惰な空気しか見せないくせに、身体はよく鍛えられている。


しかも、寄せ集めの成金紫堂なんかよりよっぽど家柄もよく。



更に今。


次期当主を剥奪されて落ちぶれた俺とは違い、収益を上げ続ける遊園地のオーナーの最高地位、"当主"の地位についていて。


どんなに本人にやる気がなく、どんなにいつも気だるげで、どんなに面倒臭がりであろうと…流れる血の気高さは、俺とは比べ物にならない。


何から何まで本当にむかつく相手。



それが――

各務久遠。