「ねえ、あのクマ男さん、どんな人? 友達?」
「"愛しの嬢ちゃん"には突っ込んでくれないんだ…」
何だか玲くんが哀しそうにぶつぶつ独りごちていたけれど。
「彼は、"三沢玲央(れお)"っていうんだ。僕の名前と同じ漢字を使うんだよ」
クマ男…。
玲くんとの共通項を、漢字に求めるなど…姑息な奴め。
「大手のテレビ局育ちで何十年。元ハッカーで、電波横取り(ジャック)する…常識破りの破天荒さでも有名でね。過去中継横取りして視聴率上げたり、結構凄いことしでかす人で…前に何度か組んで、紫堂の情報操作を手伝って貰ったことがあったんだ。
大きなスクープを上司の了承得ずに勝手に電波に乗せようとして、社長やスポンサーの怒りを食らい、こんな小さな弱小テレビ局に左遷させられたらしい。それでも巻き返せるだけのネタはあるみたいだけれど、今はおとなしくしてその時期を窺っているそうだ。それが発動されれば、きっとAPEXは飛躍するよ。
彼は報道部門にもコネがあるし、何かあれば鉄砲玉のように飛んで行くスクープを掴む天才。凄くバイタリティ溢れた人物なんだ」
玲くんが褒めるなら、凄い人なんだろ。
玲央なんて…ライオンより、やっぱりクマだ。
クマ男でいいや。
そして少し目を離した隙に、また玲くんは見出した。
あたしのドレス姿。
「もう、だから…玲くん、止めようよッッ!!!」
「ん……」
「玲くん…見てるなら、お話しようよ…!!」
「もう少しだけ……」
何が楽しいんだろう、玲くん!!!
ゆさゆさ、ゆさゆさ。
「ん……」
ゆさゆさ、ゆさゆさ。
「ん……」
あたしも意地になって揺さぶり続けたら…
机に上げていたあたしの鞄が、震動で床に落ちてしまった。
「ああ、中身出ちゃった。
ああ、蒼生ちゃんの手紙がでちゃったよ…」
これは…1枚目の手紙だ。

