「今回は、大事な"奴"の為ではなく、お前さん自身のことでの"電波横取り(ジャック)"だったから、腕が鳴ったよ。このAPEXに回されてからは、詰まらん日々だったから、お前さんの意外な一面見れて中々楽しかったぞ。

しかし全国規模で堂々と宣言したんだ。さっきも言ったが、"あちらさん"の力を甘く見るな。反撃怖いぞきっと。それだけの力を持つ奴等だ」


クマ男は、1回の喋りが長いから、タイミングが大切で。

よし今だ!!!


「ねえ、玲くん。"あちらさ「覚悟してるさ。だけどこうでもしなきゃ、流されるままじゃないか。それだけは嫌だ。僕の意思表明だ」


「あの"あちらさ「随分と堅い意思だな、若いってのはいいもんだ。がははははは」


がっくし。


誰も答えてくれない。

よって、話がまるで判りません。


「本題だけれど…」


クマ男の声に、玲くんの顔から笑みが消えて、真剣になった。


「お前さんの読み通り。Zodiacの曲から、一定の間隔で入れられている機械音を消したものを店内に流した。だが変化はなかったようだな」


「ああ。気に留める者もなく、至って平穏」


「そうか。機械音の1つは…正直お手上げだ。お前さんが、"共鳴音"と言っていた、超音波のようなものの方だ。波形から見ても…音の正体をまだ掴めない。

だがもう1つの機械音。この波形は…人間の、子供の声だった」


「子供声の…"境界領域下刺激(サブリミナル)"か」


クマ男は頷いた。


「ああ。"境界領域下刺激(サブリミナル)"用"データ変換(エンコーダ)"が1音を装って混ざり、それが一定間隔で、一定周波数を持つセキュリティトーンを生んで、"境界領域下刺激(サブリミナル)"の言葉(メッセージ)を、お前さんの得意なコード変換して曲に混ぜ込んでいる。

ステレオ接続が"データ解読変換(デコーダ)"だ。そしてこの"境界領域下刺激(サブリミナル)"の曲を聞く人間が、そのメッセージを人体に取り込める仕組みだ」


「"境界領域下刺激(サブリミナル)"のメッセージは、具体的に……え? どうしたの、芹霞。何で泣きそうな…"境界領域下刺激(サブリミナル)"?」


あたしは、殆ど涙目で頷いた。

話が判らないまま、勝手に進んで行く。


置いてきぼりは嫌だ。