俺の目の前で――
瞳の色が冷たい瑠璃から…熱い紅紫色に変わる。
それは、内包する弟の"刹那"の虚無から…兄である"久遠"の激昂へと変わった証拠。
俺は知っている。
此の世で、この男がこの瞳の色をするのは2人に対して。
1人は俺だ。
俺がこいつを嫌いなように、こいつも俺が嫌いだ。
身体全体から漂う、嫌悪の情。
俺だって漂わせる、それ以上の嫌悪の情。
芹霞の…初恋の相手なんて、忌々しいだけだ。
「何だよ、何でそんな目でオレを見るんだ?
オレはお前を助けてやったんだぞ?」
この――
上から目線の横柄な態度。
それはいつまでたっても変わらない。
没落して滅ぶ寸前だった各務家を救うため、この地を遊園地として建て直してやったことに対して、今まで感謝の念もなく。
「このオレが動いてやったんだぞ?
せりに頼まれてもないのに」
そして紅紫の色合いが強くなる。
"せり"
芹霞から、此の世で唯一…そう呼ぶことを許可されている。
12年間一緒にいた俺でさえその呼び方は拒絶するのに…13年前に出会ったこの男だけは、芹霞が"特別"許可している…面白くない現実。
そして――
芹霞にしか動きたくはないと、堂々と宣言してくるこのふてぶてしさ。

