――…ちゃあああん!!!
「せりか、だいすき」
可愛い。
可愛すぎる玲くん…。
無性に…体がむずむずする。
――…ちゃん、だあいすき!!!
思わずあたしは玲くんに抱きついた。
「あたしも、玲くんだあい好き!!!」
びくり、と玲くんの体が震えた。
さっきもそうだ。
好きだというと、玲くんは震える。
何でだ?
その顔を覗き込んでみれば――
「同じ血って…苦しいものだね…」
憂いた鳶色の瞳があって。
さっきまでの可愛い玲くんはいない。
あれ?
あれ?
声も…いつものような囁くような大人声に戻っている。
始めから…そうだったんだろうか。
あの姿は…幻だったの?
玲くんは本当に、あの姿をあたしに見せてくれていたの?
夢現の中、ゆらゆらと漂っているようなおかしな気分。
何が真実で何が幻?
何が現実で何が夢?
境界が判らなくて。
「何処までが…僕に対する情なの?」
玲くんが、何かに重なっていく。
憂いの含んだ――…色の瞳。
どくっ。
過(よ)ぎったのは――?
「――…の身代わりでもいいと…
望んだのは…僕なのに……」
あたしは今、
目の前の茶色ではなく、
何色を思い出した?

