「やばい、やばいよ玲くん。逃げようよ、玲くん」


だけど玲くんは離れない。


あたしを覆い隠そうとしてくれているんだろうか。


玲くんは意外に肩幅は広い。


「此処で結婚式のドレスを注文された、決め手は何ですかぁ!!?」


初対面のはずのアヅサは変なことを言い出した。



「けっ、結婚式って?」


「うふふふふ。勿論、も・ち・ろ・ん!!!

貴方と彼氏さんとの」



最後にハートマークでも飛びそうな、やけに甘ったるい声。


「け、けけけけけ!!?」

「式はいつですかぁ!!?」

「ししししししし!!!?」


ああ…言葉が出てこない。



「すぐ…です」



ぼそっと、まるで子供のようなたどたどしさで答えたのは玲くんで。

それでもやっぱりあたしに張り付いていて。


はあ!!?

すぐって何!!?


周りから嫉妬の視線が凄いんですけど!!?


「彼氏さん、どうですかぁ!!?

彼女さんのドレス姿」


「かんどう…です」


まだ、たどたどしい言葉のまま。


「ゆめみたいです」


そして玲くんが、あたしから少し離れて顔を上げた。



「!!!!!?」



玲くんが――

真っ赤だ。


煌に負けないユデダコだ。


何だ、どうした玲くん。


ショックすぎて熱でも出たか!!?