じたばたして逃れようとしても、
「早坂、佐々木!!! 押さえつけろ!!!
表から見えなければ何処殴ってもいい。
特にこのぽよっとした腹とか二の腕ッッ!!!
そこのナイフで削り取っても支障なしッッ!!!」
OH!!
紫堂でごろごろしてケーキばかり食べていたツケ…
何故に…此処ですぐばれる…。
空気は緊迫、凄まじい脅迫オーラを放つお姉さんに、こき使われる部隊は汗まみれ。
いやもう、お姉さんのこの凄み。
玲くんの前では、あんなにしおらしそうにしていたのに、いなくなった途端…剥き出しのこの鋭い敵意。
素人ではないでしょう。
隠しても無駄ってもんです。
神崎家には、玄人…玄犬が居るんです。
「お姉さん…所属は何処の"族"出身の方ですか?」
「仁流会系四神会レディース、元2代目総長呉羽」
聞くほうも聞くほうかも知れないけれど、すんなりと名前まで答えてくれるお姉さんもお姉さんで。
あたし以外が、びしっと石のように固まってしまっていた。
仁流会って…
最近ご無沙汰している、カラオケ友達の爺ちゃんが、そこの親分じゃなかったっけ?
久方に思い出した爺ちゃん。
ヤクザの親分なのに、大のカラオケ好きで…純金のマイクでZodiacすら歌えてしまう謎の人物。
どんな高音も出てしまう魔法のツボを押して貰った仲だ。
更に四神会って…
爺ちゃんが率いる東京イチの暴走族だと聞いたことがある。
確か…煌がバイクを乗り捨てしたのも…その1つの玄武とかじゃなかったっけ?
あの派手な借り物バイク…木場公園に捨てたままだっけ?
結構荒く乗っていたような…。
………。
まあいいや、トラブっても爺ちゃんが何とかしてくれるだろう。
レディース部門とはいえ、その元2代目総長なんて…かなりの方では…?
「まさか…伝説の"緋蝶"サン?」
何処からか声がして緊張感が走るスタジオになったけど、あたしにはその名称の効果がさっぱり。
同じような反応をする女の子に、何処からか説明が囁かれた。
「目下抗争中で、全面戦争中の何十ものレディースを1つにまとめて、約3,000人のレディース頂点にたった…」
ほう、呉羽サンはそんなに凄い人だったのか?