安直に…苦しみから逃れてはならねえ。
苦しみを感じる"心"を…捨ててはならねえ。
それが俺が"如月煌"という人間として生きる為に必要なこと。
"心"がない奴は…人間じゃないから。
それこそ、制裁者(アリス)だ。
そう…桜は言いたかったんだと思う。
俺は何処かの救世主のように出来た人間では決してねえけれど、こんな俺でも役に立てることがあるというのなら。
少しでも贖うコトが出来るとすれば。
きっとそれは…
同じような"苦痛"に悩む奴を救うこと。
逃げるんではなく、一緒にその苦しみと闘ってやる。
俺の取り柄はこの無駄に元気な身体だけだというのなら、
何処までも何処までも地の底まで堕ちて戦い抜いてやる。
それはきっと…罪だらけの俺しか出来ねえ。
だから。
今此処で自分自身に、ぐらぐら揺らいでいるわけにはいかねえ。
これだけ揺らいだら――
これ以上揺らぐことのない…妙な安心感はあるのが幸い。
刹那の…心の均衡状態かもしれねえけれど。
まずは玲だ。
罪の意識に雁字搦めとなっている、犠牲ばかりの王子様。
自分なりにもがいて、状況を打開しようとしている我武者羅な王子様。
本当にあいつは、次から次へと…犠牲精神を無駄遣いする。
あいつはえげつねえけど、苦しませたくねえんだ。
だから――。
最終的に…罪故に仕方がないからと、玲がもがくことを諦めて…それが運命だと悲嘆のうちに濁流に飲み込まれるのだけは、何としてでも阻止してみせる。

