シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



安直に…苦しみから逃れてはならねえ。

苦しみを感じる"心"を…捨ててはならねえ。


それが俺が"如月煌"という人間として生きる為に必要なこと。

"心"がない奴は…人間じゃないから。

それこそ、制裁者(アリス)だ。


そう…桜は言いたかったんだと思う。


俺は何処かの救世主のように出来た人間では決してねえけれど、こんな俺でも役に立てることがあるというのなら。

少しでも贖うコトが出来るとすれば。


きっとそれは…

同じような"苦痛"に悩む奴を救うこと。


逃げるんではなく、一緒にその苦しみと闘ってやる。


俺の取り柄はこの無駄に元気な身体だけだというのなら、

何処までも何処までも地の底まで堕ちて戦い抜いてやる。


それはきっと…罪だらけの俺しか出来ねえ。


だから。


今此処で自分自身に、ぐらぐら揺らいでいるわけにはいかねえ。


これだけ揺らいだら――

これ以上揺らぐことのない…妙な安心感はあるのが幸い。


刹那の…心の均衡状態かもしれねえけれど。


まずは玲だ。


罪の意識に雁字搦めとなっている、犠牲ばかりの王子様。

自分なりにもがいて、状況を打開しようとしている我武者羅な王子様。


本当にあいつは、次から次へと…犠牲精神を無駄遣いする。


あいつはえげつねえけど、苦しませたくねえんだ。


だから――。


最終的に…罪故に仕方がないからと、玲がもがくことを諦めて…それが運命だと悲嘆のうちに濁流に飲み込まれるのだけは、何としてでも阻止してみせる。