「何か…ひっかかる記憶でも思い出したのか? どんな策だ? 言ってみろ、聞いてやるから」
「あ? そんな記憶なんてねえってば。
俺に策などあるわけねえじゃんか。
桜こそ何かあるだろ、策。俺は桜に期待してんだ」
「は!!? あんな自信満々に玲様に"任せろ"なんて豪語しておいて!!? まるでさっぱりノープラン!!?」
「そ、ノープラン。頭がいいお前が居るなら大丈夫だって。何とかなる!!! 何ならまた正攻法で、正面切って乗り込めばいいし」
「…周涅にぼろぼろにやられたの、覚えてないのか?」
その案だけは不承知だとでも言いたげに、桜の顔が嫌悪に歪む。
「あれはあれ、これはこれよ。よし、あの時の借りを返そうぜ、桜!! 今なら俺、最強無敵になった気がする!!!」
「その自信…どこから出てくるんだ」
「俺達の…温めて熱くなりすぎた"友情"から?」
「はあああ!!?」
芹霞のことは、まだ心は疼くけれど。
それでも前向きになろうと思えたのは、桜のおかげ。
芹霞を諦めて背中を向けることが、得策でも贖罪でもないというのなら。
それであえて苦しめというのなら。
苦しみから逃れようとした俺は、
きっといつものように"逃げて"いたのだろう。
自分から切り離せば贖罪は完了すると、
安易に考えていたんだろう。
実際、罪というものは…苦痛というものは、そんな簡単に消化出来るものではなく、だからこそ罪人は救済を求めて天に祈り仰ぐんだ。
俺には、祈りを捧げる存在は天にはいねえけれど…
同じ地平で祈りたい仲間達はいる。
だとすれば、仲間という存在に向けて、
俺は何処までも信奉するしかねえだろ。
罪の為に何かを代償にと考えるのなら。
それは俺から大切なものを切り捨てるという単純なことではなく、
祈りの対象に俺が何処まで尽力できるかで。
贖罪をと考えるならば、苦しみながら俺しか出来ねえことをしなくちゃ。
芹霞を諦めることより、現実は…想い続けるほうが苦しいというのなら。
俺は苦しみを総じて受け入れねばならない。

