お前が俺に事実を告げたのは、
突発性に弱い俺に対する、きっと桜なりの事前対策なんだろうから。
これ以上のショックなことは俺にはもうねえだろうし。
俺は…
やるべきことがある。
あの白い王子様を助けねえと。
俺に頭を下げるくらい、切羽詰まった玲。
櫂が居ねば今頃脚光を浴びていた王子様。
8年前の櫂の出現で、落ちぶれてしまった王子様。
あいつの感情が露になってきたのは、つい最近のこと。
芹霞の想いによって、あいつは自分らしさが表に出始めている。
それが今、玲の実家によって壊されようとしている。
我慢も限界だということは、耐久性が強いあいつの表情からも判る程で。
そして極めつけは結婚話。
あんなに罪悪感に満ちた顔をして、"お試し"を決行したとしても…あいつが思い描いている程、コトは上手くは進まない気がするんだ。
何せ相手は芹霞だ。
何とかなるくらいなら――
とうに櫂が手に入れている…№2の強さを誇る女だ。
玲の結婚話を潰すのに、芹霞が必要だというのなら…芹霞に頑張って貰いたい。それは恋愛がどうの嫉妬がどうの抜きに…1人の人間として、そう思うんだ。
玲が俺を頼るなら、俺は頼られてやる。
俺は裏から、周涅を叩く。
実力では敵わなくても…桜が居る。
何とか桜の知恵で…
「ところで、煌。
お前には何か勝算があるんだな?」
新宿を立ち去り、屋根伝いで南下している時、桜が聞いてきた。

