「自警団が…出張っている。その締め付けに人々が怯えた結果だ。一種の恐怖政治だ」


桜の声に、俺は目を細めた。


自警団…如きが何でそんな力を持つに至った?



「私の服は…氷皇から貰ったが、これは自警団にとっては"ガイダー"という、白い服の自警団を纏める役目の存在のものだそうだ。この服を着ている限りにおいては、白い自警団に強気に出れる」


「この服が…」


俺は、いつの間にか着ていた自分の…青色の服を摘んで引っ張ったが、


「お前のは知らん。私の場合の話だ!!」


桜…。

別にペアルックでもいいだろうがよ…。


こんなにそっくりで、どこをどう見ても同じ型としか思えねえのに、桜は頑なに…別物だと言い張っている。


少し…寂しい。



「お前…少しでも記憶はないのか?」


桜が黒い瞳を俺に向けた。


きっとそれは此の数日間のことを言っているのだろう。



「ない。銀色氷皇と立ち去ったのまでしか記憶にない」


「……横須賀港で、私や玲様や櫂様にしたことも?」


「何か…したのか?」


「……記憶がないならいい」


「よくねえだろうが。俺、櫂にも何かしたのか!!?」


「直接的でもなく…証拠があるわけではないからいい」


「よくねえって!!! もう嫌なんだよ、知らぬ間に何かしでかしているってことは!! 何したんだよ、俺!! 言えよ、桜ッッ!!」


しつこく訊く俺に、桜は溜息をついて言った。


「蛆。蚕。ゴール直前の櫂様に…お前が現われた途端、それらが一斉に櫂様を狙った。そしてお前は、玲様を罵り…私を倒して、消え去った。

芹霞さんの声にも反応せず…


唯一反応したのは…」


BR002という単語だったと、桜は言った。