「うわ…画像が…電波がやけに乱れる。角度的時間的に言えば…今、監視カメラの真下を久涅が通過している…? だということは…"無効化"の影響か?」
突然、画像が乱れて静止の漆黒色に戻り行く画面。
しかし別の場所に久涅が映れば、きちんと元の映像が映し出されている。
階下の至る処に設置されている監視カメラと久涅が至近距離になれば、監視機能が停止するらしい。
つまりは、画面が黒くなった場所に…久涅はいるわけで。
「え? 台所は通過、紫堂の寝所も通過? 不審に思ってない? 何だろ、久遠でも探している……わけじゃないな。やっばいな~、紫堂。すたすたと、真っ直ぐ…1つしかない階段昇って2階に向かってきてるッッ!!!」
遠坂が顔を歪ませ、画面の1つを黒い画面に切り換えてキーボードを打った。
「セキュリティシステム…駄目だッッ!!!
機能が止まってる!!!
だったら核シェルター並みの強度を誇る扉は――」
無効化…出来るのか!!?
「うわ…開いたよ、開いちゃったよ、あの分厚いドアがあっさりッッ!!!
でもあと2つあるから…」
遠坂が切り換える、今映したばかりの監視画面の再生。
久涅の手が扉に触れようとした瞬間、
画面は乱れて何も見えなくなる。
それだけで、セキュリティーは無効になるなど。
「やばい、本当にやばいぞ、紫堂。
このままでは…」
蓮が声を上げた。
「私が足止めしてこよう。上手く言いくるめれば、そのまま階下に連れて、久遠様の元に行かせる」
そして機械室から出て行こうとする。
「もし駄目なら…何としてでも紫堂櫂を隠し通せ。
由香も隠したいところだが…紫堂櫂が喋れないのなら、切り抜けられる知恵を出せるのはお前しかいまい。口で何とか切り抜けろ」
「ボク、別に口が達者なわけじゃ…」
「いや、お前は十分だ。私はいつも感心している」
「あ、ありがとう…?」
遠坂は微妙な顔つきだ。

