――玲くん…"お試し"してて、楽しい?
それは…
芹霞は…楽しくないってこと?
きゅっと胸が締め付けられる。
――玲くん…あたしを置いていかないでよ…。
「まさか…櫂のことを思い出そうとするなんて…」
きっかけは僕のことだったはずだ。
僕と終わってしまう危惧だと思った。
僕と離れたくないと言っているのだと思った。
それで終わっていれば、僕は悦んでいただろう。
勘違いして笑顔になっていただろう。
だけど、違う。
――永遠の愛を頂戴よッッッ!!!
僕から見出されていたのは、忘却した記憶。
君が櫂に望んでいた、永遠の愛。
それは…僕に向けてのものじゃない。
僕は何?
必死に頑張ろうしている僕は何?
僕の中に流れる櫂の血が、
君だけを求める櫂の血が。
君の恋心かき立てるのなら。
ああ、それでもいいから、
芹霞を手に入れたいと僕は思った。
見栄も体裁も矜持も全て投げ捨てても、
――紫堂櫂を愛してる!!
僕が選ばれていないと知りながら、芹霞の絶叫を貰えるだけの心を欲しくて仕方が無い僕は、身代わりでもいいからと芹霞の愛を欲する。
櫂への嫉妬と羨望と…その起因となる芹霞の"心"を一身に僕が受けたくて。
記憶が目覚めぬ前に。
例え櫂の身代わりでもいいから…
僕は芹霞を手に入れたい。
時間が迫っている。
櫂の記憶が蘇れば、きっと芹霞は僕の愛を拒む気がするから。
その前に。
その前に。

