"了解、了解"
煌は言った。
僕も"お試し"を頑張れと。
破談条件に芹霞は必須。徹底的に完璧に破談させるには、同時に更なる裏工作も必要で、そこまでの余裕は僕にないのなら、同時進行での水面下での煌達の活躍こそが、打開の希望に思えた。
つまり僕は当主を抑える為にも芹霞が必要で、周涅を抑える為に煌達が必要で。
そして。嫉妬深い癖をして、あいつは…
"目眩まし"という単語を用いて、"お試し"を正当化してくれたんだ。
そんなあいつを傷つけてまで、僕は――。
心が、ますます痛くなった。
だけど僕には…
引くことも出来なくて。
煌と桜に全てを任せてる自分を責めて。
煌を傷つけていることに心痛めて。
それでも僕は芹霞を手に入れたくて。
僕は結婚したくなくて。
だからせめては。
仲間として、僕が出来ることはしようと思った。
デートという形で、
Zodiacの曲を調べることくらいは出来る。
Zodiacというのは気に食わないけれど…
池袋に新しく出来たテレビ局がある。
それは――
ゲーム大会の開催者たるAPEXが所有者で。
局自体はまだまだマイナーなものらしいけれど、
その洒落たビルや、界隈は有名なデートスポットだから。
それくらいしないと。
ソレハダレニタイスルショクザイ?
櫂を裏切り、煌を傷つけ利用して…
多分勘のいい桜に軽蔑されているだろう。
僕が芹霞を諦めればいいだけの話。
僕が結婚すれば良い話。
そうすれば、皆が幸せになれる。
かつての僕だったらとうに諦めていた。
だけど――
それが出来ない今の僕は…
罪だけを増やしていく。
ただ…自分の幸せを願ってしまうが為に。

